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歯医者の麻酔が切れない?効果時間と正しい対処法
歯医者の麻酔が切れない?効果時間と正しい対処法

はじめに
歯科治療で麻酔を受けた後、「いつまで効いているの?」「食事はいつからできる?」と不安に思ったことはありませんか?
麻酔の効果時間は治療の種類や個人の体質によって大きく異なります。今回は、歯科医師として多くの患者さんを見てきた経験をもとに、麻酔の種類別効果時間から、麻酔中の注意事項、さらに緊急時の対応まで、患者さんが知っておくべき情報をわかりやすく解説します。
🕐 麻酔の効果時間

浸潤麻酔(一般的な局所麻酔):1〜3時間
使用される治療例
- 虫歯の治療
- 歯石除去
- 小さな外科処置
- 根管治療
効果の特徴
- 治療部位とその周辺のみに効果
- 比較的短時間で切れる
- 日常生活への影響が少ない
患者さんの体験談 :多くの患者さんから「お昼に治療を受けて、夕方には完全に感覚が戻った」という声をいただいています。ただし、午前中に治療を受けた場合、昼食時にはまだ効いていることが多いので注意が必要です。
伝達麻酔(広範囲麻酔):4〜6時間
使用される治療例
- 親知らずの抜歯
- 複数本の治療を一度に行う場合
- 大掛かりな外科手術
- インプラント手術
効果の特徴
- 下唇、舌、頬の広範囲に効果
- 長時間の効果で手術後の痛みも軽減
- より慎重な行動が必要
実際の経験より:私自身が親知らずの抜歯で伝達麻酔を受けた際は、午前中に処置を受け、夕飯頃まで効果が続きました。この間は話しにくさもあり、水を飲む際も注意が必要でした。食事を摂らないわけにはいきませんので気をつけながら食事は摂りました。
アドレナリン非含有麻酔:30分〜1時間
対象患者
- 心疾患をお持ちの方
- 高血圧で薬物治療中の方
- 甲状腺機能亢進症の方
- 妊娠中の方(医師判断により)
注意点 効果時間は短いものの、全身の安全を優先した選択です。医師と十分相談の上で使用されます。
麻酔の効果には個人差がある
浸潤麻酔も伝達麻酔も人によって効き目に大きな個人差があります。
そのため、麻酔を打っている側の歯科医師でも、麻酔の効果時間を正確に予測することは難しいです。
歯医者で「麻酔は◯時間くらい効いてます」「お食事は◯時間後にとってください」など説明をされることがあると思いますが、あくまで一般的な目安の時間なので、言われた時間を過ぎても麻酔が切れない場合もよくあります。その場合でも焦らず待ちましょう。
必ず麻酔は切れるので、安心してください。
私はこれまで歯科治療で麻酔をされた方を何人も見てきましたが、早い方だと、まだ帰宅しないうちに麻酔が切れてきたという方もいました。逆に浸潤麻酔でも午前中に処置を行ったにも関わらず夕方まで効いていた方もいます。
本当に効き目には個人差があると感じています。
⚠️ 麻酔中の注意事項:安全な過ごし方

🍽️ 食事について:段階的なアプローチ
【避けるべきもの】
- 熱い食べ物・飲み物(火傷のリスク)
- コーヒー、お茶、スープ
- 焼きたてのパン、ピザ
- 鍋料理、ラーメン
- 硬い食べ物(噛み傷のリスク)
- せんべい、ナッツ類
- 硬いパン、クラッカー
- 氷、硬いキャンディー
【食べても良いもの(注意して)】
- 常温の柔らかい食品
- おかゆ、うどん(冷ましたもの)
- ヨーグルト、プリン
- バナナなどの柔らかい果物
- 麻酔側と反対側で噛む
- 意識的に健康な側で咀嚼
- 少量ずつゆっくりと
- 十分に冷ましてから
【水分補給のコツ】
- ストローは使わず、コップで少しずつ
- 常温の水が最も安全
- 一度に大量に飲まない
🍺 アルコールについて:なぜダメなのか
血行促進による悪影響
- 出血が止まりにくくなる
- 腫れや痛みが悪化する
- 感染リスクが高まる
- 治癒が遅れる
どうしても避けられない場合
- 少量(ビール1杯程度)にとどめる
- 水分を多めに取る
- 早めに休息を取る
- 翌日以降は完全に禁酒
👆 触ってはいけない理由と対策
なぜ触ってはいけないの?
- 感覚がないため、強く押しても気づかない
- 無意識に傷つけてしまう可能性
- 細菌感染のリスク
特に子どもの場合の対策
- 面白がって噛んだり引っ張ったりしないよう注意
- 保護者の方が見守る
- 気を紛らわせる活動を用意
処置後の説明で麻酔が切れるまでは食事は摂らないでくださいとお伝えすることもありますが、決して食事を禁止しているわけではありません。『できれば麻酔が切れてからお食事をしていただいた方が安全です』というニュアンスでお伝えしております。
上記のように必要に応じて、気をつけて食事をしていただくことは全く問題ございません。
🚨 こんな時は歯医者に連絡を!緊急時の対応
すぐに連絡が必要な症状
麻酔に関するトラブル
- 12時間以上麻酔が切れない
- 浸潤麻酔の場合で、麻酔とは別の部位に痺れが出現した(臼歯部に打ったのに前歯部に効果が出てきた等)
※ただし麻酔部周囲に痺れがでることはある。(前歯・小臼歯部に麻酔して鼻の方まで痺れる等) - 強い頭痛や吐き気
- 呼吸困難や動悸
治療部位のトラブル
- 深く噛んでしまい出血が止まらない(血がにじむは問題ない)
- 激しい痛み(麻酔が切れる前から)
- 顔の腫れが急激に悪化
- 熱が出る(38度以上)
誤って傷つけた場合
- 頬や舌を深く噛んでしまった
- 治療部位を強くぶつけた
- 大量出血が起こった
応急処置の方法
出血への対応
- 清潔なガーゼを患部に当てる
- 軽く圧迫し、20分程度様子を見る
- 改善しない場合は歯科医院へ連絡
腫れへの対応
- 冷たいタオルで冷やす(氷は直接当てない)
- 頭を少し高くして休む
- 痛み止めの服用(処方されている場合)
📞 よくある質問とその答え
Q1: 麻酔が24時間経っても切れないのですが、大丈夫でしょうか?
A1: 非常に稀なケースですが、可能性として以下が考えられます:
- 神経損傷(治療時の偶発的な損傷)
- アレルギー反応の一種
- 個人の代謝の問題
すぐに歯科医院に連絡し、診察を受けることをお勧めします。多くの場合、時間と共に回復しますが、専門的な判断が必要な場合があります。
Q2: 麻酔中に間違って頬を噛んでしまいました。どうしたら良いですか?
A2: 以下の手順で対応してください:
- 出血がある場合は清潔なガーゼで圧迫
- 冷たいタオルで冷やす(10-15分)
- 大きな傷や深い傷の場合は歯科医院に連絡
- 麻酔が切れてから痛みが出る可能性があるため、痛み止めを準備
Q3: 麻酔の効果には本当に個人差があるのですか?
A3: はい、大きな個人差があります。影響する要因:
- 体重・体格:大きな方ほど効きにくい傾向
- 年齢:高齢者は効果が長続きしやすい
- アルコール耐性:お酒に強い方は効きにくい場合がある
- ストレス状態:緊張していると効きにくいことがある
- 治療部位の炎症:炎症があると効きにくい
Q4: 授乳中ですが、麻酔は赤ちゃんに影響しませんか?
A4: 歯科で使用する局所麻酔は以下の理由で安全です:
- 全身への移行が非常に少ない
- 母乳への移行もごく微量
- すぐに代謝されて排出される
ただし、心配な場合は治療後3-4時間は搾乳・廃棄し、事前に搾乳した母乳を使用することをお勧めします。
まとめ:安心して治療を受けるために
歯科治療での麻酔は、現代の歯科医療において欠かせない技術です。正しい知識を持って適切に対処すれば、安全で快適に治療期間を過ごすことができます。
最も重要なポイント
- 麻酔の種類によって効果時間が大きく異なる
- 無理に食事せず、麻酔が切れてから安全に摂取する
- 事前の計画と準備が快適な治療の鍵
最後に 麻酔は患者さんの痛みを取り除き、安全に治療を進めるための大切な手段です。「効果が長く続いて不安」という気持ちも当然ですが、必ず効果は切れますので安心してください。
不安なことがございましたら、歯科医院にご相談ください。私たち歯科スタッフは、患者さんが安心して治療を受けられるよう、全力でサポートいたします。
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この記事は歯科医師の実際の経験と、最新の歯科医学情報に基づいて作成されています。個人の症状や状況により対応が異なる場合がありますので、心配な症状がある場合は歯科医院にご相談ください。
