ブルーラジカル
(重度歯周病治療)

ブルーラジカルとは

「ブルーラジカル」は、メスを使わずに進行した歯周病に対応できる、次世代の歯周治療システムです。臨床導入が進められているこの機器は、2023年に厚生労働省より医療機器製造販売承認(薬事承認)を取得しています。この機器は主に歯周炎のステージⅢ又はステージⅣの患者さんの治療に用いる薬剤併用超音波歯周用スケーラーです。歯石等の沈着物の除去と歯周ポケット底部の殺菌ができる機能が正式に認められています。安全性に関しても臨床試験で確認されており、治療を受ける患者さんにも安心いただける仕様です。

治療の仕組みは、3%の過酸化水素に対して405nmの青色LEDを照射し、口腔内で高反応性の活性酸素(フリーラジカル)を生成。このフリーラジカルが原因菌を標的として強力に除菌します。さらに本機器には超音波機能も搭載されており、歯石やバイオフィルム(プラーク)の物理的な除去にも対応可能です。

実際の臨床現場では、歯ぐきの赤みや腫れの軽減、歯周ポケットの深さの改善といった変化が多く報告されています。動揺のある歯においても、周囲組織の改善により安定性の向上が期待され、咬合や口腔内の健康を保つための有力な治療法と位置づけられています。
従来型のスケーリング機器に比べ、組織にかかるダメージが少なく、より繊細で深部まで届く治療が可能です。手術を避けたいという希望を持つ重度の歯周病患者さんにとって、重要な選択肢の一つとなり得ます。

ブルーラジカルのメリットと
デメリット

ブルーラジカル治療のメリット

Merit.01 外科手術を行わずに
治療可能
ブルーラジカルは切開を伴わない治療法で、術後の不快感や腫れを最小限に抑えることができます。心身への負担が軽く、ストレスの少ない治療を実現します。
Merit.02 優れた殺菌力で再発を
防止
青色光と過酸化水素の相互作用により、高水準の除菌力で原因菌を除去します。治療後の再発率も抑えられることから、長期的な予防にもつながります。
Merit.03 人体への安全性を重視
ブルーラジカルによって発生するラジカルは、細菌に対して選択的に作用し、歯ぐきや組織を傷つけることはほとんどありません。過酸化水素も安全な形で分解され、安心して治療に臨めます。
Merit.04 短時間で終了する
治療工程
切開を伴わない治療のため、1回の処置にかかる時間が比較的短く済みます。スケジュールを圧迫せず、無理なく通院できる点も魅力のひとつです。
Merit.05 超音波振動による
物理的除去も併用
超音波による振動で、細菌の温床である歯石やプラークをしっかりと取り除きます。これにより歯ぐきの状態が整い、かみ合わせのバランスも改善されやすくなります。

ブルーラジカル治療のデメリット

Demerit.01 軽度の歯周病には
向かない可能性も
この治療法は、重症度の高い歯周病を対象としたもので、軽度の症状では過剰治療となる場合があります。症状の程度によっては、よりシンプルなアプローチが適していることもあるため、歯科医師の診断を受けて適応を確認しましょう。
Demerit.02 保険適用外で費用が
やや高い
ブルーラジカル治療は最新機器を使用するため、従来の方法よりコストが高くなる傾向があります。当院での処置は自費治療となりますが、治療費は該当項目もご覧ください。

従来の治療法との違いとは

従来法の限界と課題

一般的な歯周病治療では、超音波スケーラーによって歯石やプラークを除去しますが、歯周ポケットが深い場合には取り残しが出ることも。加えて、細菌の再繁殖を防ぐ目的で抗菌薬を使用することもありますが、副作用や耐性菌のリスクも考慮が必要です。

ブルーラジカルによる新しいアプローチ

一般的な歯周病治療では、超音波スケーラーによって歯石やプラークを除去しますが、歯周ポケットが深い場合には取り残しが出ることも。加えて、細菌の再繁殖を防ぐ目的で抗菌薬を使用することもありますが、副作用や耐性菌のリスクも考慮が必要です。

ブルーラジカルの適応範囲

ブルーラジカルは、中等度から重度の歯周病に特に優れた効果を発揮する非外科的治療法です。従来、重度歯周病は外科手術を伴う治療が一般的であり、歯ぐきの切開や縫合を要することから、患者さんにとっては治療の痛みや術後の腫れ、回復期間の長さが大きな負担となっていました。一方、ブルーラジカルは外科処置を必要としないため、従来と同等以上の治療効果を保ちつつも、患者さんの身体的負担や心理的ストレスを大幅に軽減することが可能です。
具体的には、ブルーラジカルが持つラジカル殺菌作用により、深い歯周ポケット内部や炎症が著しい歯ぐきに潜む歯周病菌を徹底的に除去できます。一般的なスケーリングやルートプレーニングでは取り切れない細菌の巣窟にまで作用が及び、歯周組織の炎症を抑制し、再生を促します。

そのため、通常のクリーニング処置だけでは十分な改善が期待できない患者さんや、従来の治療で思うような効果が得られなかった患者さんにこそ、ブルーラジカルが適切と言えるでしょう。

ブルーラジカル治療の
実施条件

ブルーラジカル治療を安全かつ効果的に実施するためには、患者さんご自身のお口の衛生状態が良好であることが重要です。その衛生管理の指標となるのが、PCR(プラークコントロールレコード)です。PCR とは、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)の状態を数値化した評価基準であり、染め出し液を使用して肉眼では見えにくい歯垢を可視化し、その付着割合を測定します。PCR 値が低いほど、日常的なブラッシングが適切に行われており、口腔内が清潔に保たれていることを意味します。
当院では、この PCR 値を 20%以下に維持することを治療実施の条件としています。これは、歯周病治療において術後の再感染や症状悪化を防ぐために不可欠な基準です。PCR 値が高いまま治療を進めると、治療後に再度細菌が繁殖し、症状が再発するリスクが高まります。

そのため、患者さん一人ひとりのお口の状態を詳しく把握し、適切なブラッシング方法や補助器具の使用方法など、個別に最適化したブラッシング指導を行っています。患者さんご自身が日常的に十分な口腔ケアを実践し、継続できる状態になった時点で、ブルーラジカル治療の対象部位を最終的に決定いたします。当院は、患者さんとともに虫歯や歯周病の予防に取り組み、持続可能な口腔内環境を整えることを目指しています。

当院のブルーラジカル治療
への考え方

当院では、ブルーラジカル治療器を歯周病治療において非常に有用な選択肢の一つと位置付けています。この治療法は従来の超音波スケーラーなどによる歯石除去と比較して、特に重度の歯周病に対し、細菌の活動を強力に抑制することが実証されています。ただし、患者さんにご理解いただきたいのは、この治療法は歯周病を完全に治癒させる、あるいは失われた歯ぐきや骨などの歯周組織を再生させるというものではない点です。歯周病には症状の進行度合いに応じてステージⅠからⅣまでの分類があり、特に他院で抜歯が必要と診断された重度の歯周病の歯に関しては、ブルーラジカルを使用しても必ず保存できるとは限りません。歯周病の進行状況によっては保存が難しいケースもありますので、個々の患者さんの口腔内状況に応じた慎重な診断と治療計画の立案が不可欠となります。

歯周病は歯科医療において完全に治癒させることが困難な疾患であり、現代の医学においても治療後のメインテナンスや定期的な管理が非常に重要とされています。しかし、ブルーラジカルはその優れた殺菌力により、歯周病菌の活動を効果的にコントロールし、歯周病の進行を抑制する点で大きな期待を寄せられています。特筆すべきは、ブルーラジカルの細菌に対する高い殺菌能力が科学的に立証され、厚生労働省から認可を得ている点です。当院としてはこの治療法を積極的に取り入れつつも、従来の治療法や外科的処置、日常のセルフケア指導などと組み合わせ、総合的な治療を行うことが重要と考えております。患者さん一人ひとりのお口の状態やかみ合わせを総合的に診断し、適切な治療計画をご提案いたしますので、歯周病や虫歯の治療でお悩みの方はぜひお気軽に当院にご相談ください。

治療費用について

ブルーラジカルの治療費用についてご案内します。
当院では、ブルーラジカル治療を1本あたり11,000 円(税込)、奥歯4本または前歯6本をまとめた1ブロックは 39,600 円(税込)で提供しております。患者さんの歯ぐきやかみ合わせ、虫歯の状態に応じ、1回で最大2ブロックの施術が可能です。

治療をご案内できない方と
注意事項

当院では、重度の歯周病治療として「ブルーラジカル治療」を行っておりますが、患者さんの安全を第一に考え、以下に該当する方にはご案内することができません。

ブルーラジカル治療をご案内できない方

  • 妊娠中の患者さん
  • ペースメーカーを装着されている患者さん
  • 局所麻酔注射が不可能な患者さん
  • 光過敏症の診断を受けている患者さん
  • 無カタラーゼ症の患者さん
  • 鼻呼吸ができないもしくは水を口に溜めていられない患者さん
  • 骨粗鬆症の方でBP製剤を服用されている患者さん

これらに該当する場合は、別の適切な治療法をご提案させていただきますので、まずはご相談ください。

ブルーラジカル治療に関する注意事項

治療回数や治療対象部位について

ブルーラジカル治療は、重度の歯周病に対し歯周病菌を効果的に殺菌、歯ぐきの状態を改善することを目的とした治療法です。治療回数や対象となる歯の部位、本数は患者さんごとに異なり、歯周病の進行度合いや症状によって決定いたします。

治療後の歯ぐきの変色について

治療後、一時的に歯ぐきが白く変色することがあります。これは使用する過酸化水素水の強力な殺菌作用によるもので、通常は数日以内に自然な色へと戻りますのでご安心ください。

治療後の痛みや不快感について

ブルーラジカル治療後、ごくまれに歯ぐきに痛みや不快感を覚える場合があります。その際は追加で適切な処置やケア方法をご案内いたしますので、お気軽にご相談ください。

セルフケアと専門的ケアの重要性

治療効果を最大限に引き出すためには、日頃のセルフケアと当院での専門的な口腔ケアが非常に重要です。当院では、歯周病の基本治療や定期的なメインテナンスを受けている患者さんを対象としてブルーラジカル治療を提供しています。

治療前後のブラッシングとメインテナンス

ブルーラジカル治療の前後には、適切なブラッシング方法や定期的なメインテナンスを推奨しています。歯ぐきの健康を保ち、虫歯やかみ合わせの問題を予防するためにも、毎日のケアを継続していただくことが大切です。

他院から受診される患者さんへ

当院を初めてご受診される際は、現在のかかりつけ医からの「紹介状」をご持参いただきますようお願い申し上げます。
診療が終了いたしましたら、引き続きの管理をお願いするため、かかりつけ医のもとへお戻りいただく流れとなっております。
患者さんにとってより安心で一貫した医療提供を実現するための体制となっておりますので、ご理解とご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。 あわせて、紹介状には直近の歯周検査結果(BOP値・PCR値)を添付いただき、また、ブルーラジカル処置を希望される部位についてもご記載いただくよう、かかりつけ医へご依頼をお願いいたします。 なお、当院では紹介状・資料をご持参いただいた後、改めて検査およびカウンセリングを実施いたします。
これらの費用はすべて実費(自費診療)となりますので、あらかじめご了承くださいますようお願いいたします。