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歯周病治療にブルーラジカルは有効?従来治療との使い分けを解説

歯周病は、日本人の成人の約8割が罹患していると言われる国民病です。
重度の歯周病になると、これまでは外科手術や抜歯が避けられないケースも少なくありませんでした。しかし近年、「ブルーラジカル」という新しい治療法が登場し、歯周病治療の選択肢が広がっています。
この記事では、小林歯科医院が導入したブルーラジカル治療について、その仕組みや従来の治療法との違い、どのような患者さんに適しているかを詳しく解説します。
ブルーラジカルとは?世界初の歯周病治療器
ブルーラジカルは、2023年7月に厚生労働省から医療機器製造販売の承認を受けた、世界で初めて「歯周病治療器」として認可された画期的な治療機器です。
これまでの歯周病治療器は、歯石や歯垢を除去することが主な目的でした。
一方、ブルーラジカルは「歯周病そのものを治療する効果」が正式に認められた初めての治療器となります。
3%過酸化水素と青色LEDの組み合わせ
ブルーラジカルの治療原理は、3%過酸化水素水と405nmの青色LEDを組み合わせることにあります。
この2つを反応させることで「ヒドロキシラジカル」という活性酸素が発生し、歯周病菌を強力に殺菌します。臨床試験では、口腔内細菌を99.99%殺菌できることが確認されています。
さらに、超音波スケーラー機能も併用することで、歯周ポケット深部の殺菌と歯石・バイオフィルムの物理的除去を同時に行えるのが大きな特長です。
東北大学との共同研究から生まれた技術

ブルーラジカルは、東北大学大学院歯学研究科の菅野太郎教授らが2006年より開発に取り組んできた研究成果です。
約17年の研究期間を経て、治験を通じて承認された医療機器として実用化されました。開発の背景には、従来の治療法では十分な殺菌・除去ができないという課題がありました。
従来の歯周病治療との違い
ブルーラジカルと従来の歯周病治療には、どのような違いがあるのでしょうか。
治療方法、殺菌効果、患者さんへの負担など、複数の観点から比較してみましょう。
治療方法の違い
従来の治療法は、主に超音波振動を用いたスケーリング・ルートプレーニング(SRP)が中心でした。器具で物理的に歯石やプラークを取り除くことが主な目的です。
ブルーラジカル治療では、超音波振動に加えて、ラジカル殺菌を同時に行います。歯周ポケットに3%過酸化水素水を注入し、青色LEDを照射することで活性酸素を発生させ、細菌を直接破壊します。
殺菌効果の違い
従来のSRPでは、歯周ポケットの深部まで器具が届きにくく、細菌の取り残しが発生することがありました。重度の歯周病では、抗菌薬の投与が必要になるケースも少なくありません。
ブルーラジカルは、レーザー光と過酸化水素水が届けば殺菌効果が見込めるため、歯周ポケットの底部まで効果的に殺菌できます。チップ先端からレーザー光と過酸化水素が放出されるため、最も重要なポケット底部で最大の殺菌効果が発揮されます。
侵襲性と患者さんへの負担

従来の治療法では、重度の歯周病になると歯肉を切開する外科的処置が必要になることがあります。外科処置を行う場合、痛みや腫れが比較的大きくなります。
ブルーラジカル治療は非外科的アプローチで、切開や剥離などの外科的侵襲が不要です。痛みが少なく、約1割の方に軽度な痛みが発現する可能性がある程度です。治療後の回復も早く、患者さんの身体的・心理的負担を大きく軽減できます。
ブルーラジカル治療のメリット
ブルーラジカル治療には、従来の治療法にはない多くのメリットがあります。
外科手術を避けられる可能性
最大のメリットは、外科処置を避けて治療を進められる可能性があることです。
「手術はできれば避けたい」「他院で抜歯と言われた歯を、可能な限り残したい」という患者さんにとって、ブルーラジカルは有力な選択肢となります。歯周病専門医の立場からも、外科処置の数を減らせるならその方が良いと考えられています。
高い殺菌効果と耐性菌リスクの低減
ブルーラジカルは、抗菌薬とは異なり、光反応により細菌を物理的に破壊するため、耐性菌の発生リスクが極めて低いです。
抗生物質使用の最小化により、化学療法に頼る必要がなく、頻回の抗生物質の使用を抑えられます。人体への影響が少なく、安全性が高い点も大きな利点です。
治療期間の短縮
従来の口腔内を4〜6ブロックに分割して行うSRPと比べると、ブルーラジカルは1回で治療できます。
治療時間は1本の歯につき約5分程度で、通院中の患者さんの負担を軽減します。3〜6ヶ月でかなり良い結果が出るケースもあり、患者さんの負担を大きく減らせると考えられています。
口臭予防効果

歯周病菌が減ることで、歯ぐきからの出血や膿の減少が期待でき、口臭の軽減にもつながります。
排膿や炎症の消失、歯周ポケットの浅化が期待できるため、口腔内環境全体の改善が見込めます。
ブルーラジカル治療のデメリットと注意点
メリットが多いブルーラジカル治療ですが、いくつかのデメリットや注意点もあります。
保険適用外の自由診療
ブルーラジカル治療は、現在のところ健康保険適用の対象外となり、自費診療(自由診療)となります。
費用は歯科医院によって異なりますが、一般的に1歯あたり16,500円程度が相場です。治療前後の検査費用なども含めると、総額でまとまった費用が必要になります。
効果の個人差と完治ではないこと
ブルーラジカル治療は、歯周病の進行を抑制するものであり、失われた歯周組織の再生はできません。
炎症の進行度や口腔内環境によって治療効果が異なることがあります。喫煙者や糖尿病患者など、歯周病のリスクが高い人では改善効果が限定的になる場合があります。深い歯周ポケットは浅くはなりますが、歯周病の治癒の指標である3mm以下にするのは難しいかもしれません。
術後のケアの重要性

ブルーラジカルで歯周病菌を減らした後も、プラークは日々溜まり続けます。
メンテナンスを怠ると再発のリスクがあり、継続的なセルフケアと衛生管理が重要です。治療効果を最大限に引き出すため、PCR値20%以下を目安としたブラッシング指導・口腔管理を治療前後に必ず行い、治療後も定期的なメインテナンスが必要です。
治療を受けられない方
以下の方は、ブルーラジカル治療の適応外となります。
- ペースメーカーを使用している方
- 無カタラーゼ症の方
- 光線過敏症の方
- 麻酔薬・光・過酸化水素アレルギーの方
- 妊娠中の方
小林歯科医院でのブルーラジカル治療の考え方
小林歯科医院では、ブルーラジカルを「歯周病を完全に治癒させる魔法の治療」とは考えていません。
歯周病は慢性的な疾患であり、治療後のセルフケア・定期管理がなければ再発リスクは高まります。そのため、基本的な歯周病治療、ブラッシング指導、定期的なプロフェッショナルケアと組み合わせた包括的な歯周病管理を行うことが、当院の治療方針です。
安全性と適応を重視した診療体制
ブルーラジカル治療は、すべての歯周病患者さんに適応できる治療ではありません。
小林歯科医院では、歯周病の進行度、歯ぐきや骨の状態、全身疾患や服薬状況、PCR(プラークコントロールレコード)値などを総合的に評価し、安全に実施できるかを慎重に判断しています。
治療前の準備とセルフケアの重視

ブルーラジカル治療は、誰でもすぐに受けられるわけではありません。
小林歯科医院では、PCR20%以下という基準を設け、日常の歯磨きがしっかりできているかを重視しています。治療前には、ブラッシング方法やケア用品の使い方を丁寧に指導します。「治療して終わり」ではなく、再発を防ぐために患者さん自身ができることを一緒に考える姿勢を大切にしています。
現実的で安全性を重視した治療計画
「手術はできれば避けたい」「他院で抜歯と言われた歯を、可能な限り残したい」という患者さんに対し、小林歯科医院では、ブルーラジカルを含めた複数の治療選択肢の中から、現実的で安全性を重視した治療計画を提案しています。
「ブルーラジカルを使えば必ず歯が残る」という説明はしません。歯の状態によっては保存が難しい場合があること、歯周病は完全に治る病気ではなく、継続的な管理が必要な病気であることも、丁寧に説明します。
ブルーラジカル治療の流れ
小林歯科医院でのブルーラジカル治療は、以下のような流れで進めます。
事前検査(2〜3回の来院)

初回検査では、歯周病が進行している歯を詳細に検査し、全体的な口腔内クリーニングを行います。清潔な状態を保てるよう適切な歯磨き方法を指導します。
2回目の検査では、前回の診断結果と比較を行います。必要に応じて、歯周病が進行している箇所の歯周ポケット内を清掃し治療を進めます。
3回目の検査では、ブルーラジカル治療が適用可能な歯を確認します。患者さんが適切な歯磨きができているか最終チェックを行い、問題がなければブルーラジカル治療をご案内します。
ブルーラジカル治療(1回)
治療を行う部位には局所麻酔を施し、その後ブルーラジカル治療を実施します。
対象となる歯すべての処置が完了した後は、ブルーラジカル後のメンテナンスへと移行します。1本の歯につき約5分程度で治療が終了します。
治療後メンテナンス(1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後)
1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後に定期的なメンテナンスを行います。
治療を行った歯の状況や炎症などを確認し、ブラッシング指導も行います。3ヶ月後には、ブルーラジカル治療後の最終検査を実施します。治療後の歯周ポケットの深さや出血の有無などを再評価し、長期的な管理計画を立てます。
ブルーラジカルと従来治療の使い分け
ブルーラジカルと従来の治療法は、どのように使い分けるべきでしょうか。
軽度〜中等度の歯周病
軽度から中等度の歯周病では、従来のスケーリング・ルートプレーニングと適切なブラッシング指導で十分に改善が見込めるケースが多いです。
まずは基本的な歯周病治療を行い、定期的なメンテナンスで管理していくことが推奨されます。
中等度〜重度の歯周病(ステージⅢ・Ⅳ)

中等度から重度の歯周病(ステージⅢ・Ⅳ)で、従来のクリーニングや通常の歯周病治療では改善が難しかったケースでは、ブルーラジカル治療が有効な選択肢となります。
歯周ポケットの深さや歯ぐきの炎症が改善したという報告がある治療法です。外科処置を避けたい患者さんや、抜歯を避けたい患者さんにとって、検討する価値のある選択肢です。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎の治療では、初期の段階が非常に重要です。
歯周病専門医の見解では、インプラント周囲粘膜炎、すなわちインプラント周囲の軽度な炎症の段階でブルーラジカルを使用することで、効果的な治療が期待できると考えられています。ただし、進行したインプラント周囲炎では、外科的処置が必要になる場合もあります。
まとめ:ブルーラジカルは歯周病治療の新たな選択肢
ブルーラジカルは、重度の歯周病に対して非外科的にアプローチできる、世界初の歯周病治療器です。
3%過酸化水素と青色LEDを組み合わせた「ラジカル殺菌」により、歯周病菌を99.99%殺菌できることが臨床試験で証明されています。外科手術を避けられる可能性、高い殺菌効果、治療期間の短縮など、多くのメリットがあります。
一方で、保険適用外の自由診療であること、効果に個人差があること、術後のケアが重要であることなど、注意点もあります。
小林歯科医院では、ブルーラジカルを「魔法の治療」ではなく、包括的な歯周病管理の一環として位置づけています。患者さんの状態を総合的に評価し、安全性を重視した治療計画を提案しています。
「もう抜くしかないと言われた」「手術は避けたい」「歯周病を何とかコントロールしたい」
そう感じている方にとって、ブルーラジカル治療は検討する価値のある選択肢の一つです。まずは現在のお口の状態を正確に把握することから始めてみてください。
詳しい情報や治療についてのご質問は、小林歯科医院のホームページをご覧いただくか、お電話でお問い合わせください。皆様の歯の健康をサポートするために、私たちはいつでもお待ちしております。
著者情報
小林歯科医院 院長 小林 健二
日本顕微鏡歯科学会 認定医

