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顎関節症は5つの分類に分かれる?タイプ別の特徴と違いを歯科医が解説

顎関節症とは?まずは基本を理解しましょう

「口を開けると顎が痛い」「カクカクと音がする」「大きく口を開けられない」・・・

こうした症状に悩まされている方は少なくありません。これらは**顎関節症**の代表的な症状です。

顎関節症とは、顎の関節や周辺の筋肉に異常が生じ、痛みや機能障害が起こる状態を指します。耳の穴の少し前方に位置する顎関節は、上顎の骨と下顎の骨を結ぶ重要な関節で、左右にひとつずつあります。

実は、軽い症状も含めると人口の約20%近くの方が顎関節症に該当すると言われています。しかし、実際に医療機関を受診するのは、そのうちわずか5%程度です。

多くの方が「このくらい大丈夫」と放置してしまいがちですが、症状が進行すると日常生活に支障をきたすこともあります。

顎関節症は4つ(または5つ)のタイプに分類されます

顎関節症は、原因や症状によって複数のタイプに分類されます。

日本顎関節学会では、主に**4つのタイプ(Ⅰ型〜Ⅳ型)**に分類しており、これに「どれにも当てはまらないもの(Ⅴ型)」を加えて5つとする場合もあります。

それぞれのタイプで原因や症状、治療法が異なるため、正確な診断が重要です。自分の症状がどのタイプに該当するのかを知ることで、適切な治療につながります。

Ⅰ型:咀嚼筋痛障害(筋肉の異常)

Ⅰ型は、顎を動かす筋肉(咬筋や側頭筋など)の「使いすぎ」が原因で起こる、いわゆる**筋肉痛**です。

咬筋は頬のあたりに、側頭筋はこめかみに痛みを生じます。こめかみの痛みから「頭痛」と訴える患者さんもいらっしゃいます。

頸部や肩甲帯の機能不全、呼吸機能不全なども関連して症状が引き起こされることがあります。治療は、筋マッサージや顎の安静が中心です。

Ⅱ型:顎関節痛障害(関節靭帯の異常)

Ⅱ型は、関節靭帯の異常によるもので、簡単に言うと**「顎の捻挫」**です。

無理に口を開けすぎたり、硬いものを食べたり、歯ぎしりや食いしばりでも生じます。顎関節は耳の穴の直前にあるため、「耳の痛み」と思って耳鼻咽喉科を受診される患者さんもいらっしゃいます。

治療としては、あくびは控える、硬いものは避ける、食事は小さくカットして大きく口を開けないようにするなど、可能な限り顎を安静にすることが大切です。

Ⅲ型:顎関節円板障害(関節円板の異常)

Ⅲ型は、関節円板の異常によるものです。

関節円板とは、上顎の骨と下顎の骨の間に存在する、クッションのような役割をする組織です。Ⅲ型の患者さんは関節円板の位置がずれてしまっているため、口を開けると**「カクカク」「ポキポキ」**といった関節雑音を伴います。

Ⅲ型はさらに2つに分類されます。

Ⅲ型-A(復位を伴う転位)は、関節円板がずれても元の位置に戻るタイプで、関節雑音が主な症状です。症状が雑音だけの場合は、特に治療の必要はありません。

Ⅲ型-B(復位を伴わない転位)は、関節円板のずれがひどくなり、元に戻らなくなったタイプです。雑音が消失して、代わりに**開口障害**が出現します。この場合、一般的にマウスピース治療を行いますが、効果が不十分な場合には、より専門的な治療が必要になることもあります。

Ⅳ型:変形性顎関節症(骨の異常)

Ⅳ型は、関節を構成する下顎骨の関節突起の変形によるものです。

開口時に「シャリシャリ」とした音がする場合は、このⅣ型を疑います。このタイプは症状だけでは診断が困難なため、レントゲン撮影によって骨の変形を確認してから診断されます。

変形した骨を元通りにすることは困難なので、「痛みなく」「十分に口が開く」ことを目標に、マウスピース治療や開口訓練を行います。

Ⅴ型:その他(どれにも当てはまらないもの)

Ⅰ型からⅣ型のどれにも当てはまらない症状や、複数のタイプが複合している場合をⅤ型とすることがあります。

顎関節症は、複数の要因が重なって発症することも多いため、慎重な診断が求められます。

顎関節症の原因は何でしょうか?

顎関節症の主な原因は、**噛み合わせの不具合**による場合がほとんどです。

生まれつき噛み合わせが悪かったり、歯ぎしりや食いしばりによって歯が磨り減ってしまったり、虫歯治療の際に高さの合わない詰め物をしたために噛み合わせが合わなくなった場合、前後左右の噛む力が不均等になります。

その結果、筋肉のバランスが崩れて顎が移動し、ずれが生じます。そして顎関節に過剰な負担がかかり、顎関節症の原因となるのです。

また、日常生活の習慣も大きく関係しています。

  • 上下の歯を接触させる習慣(TCH:歯牙接触癖)
  • 頬杖をつく、片方の歯で噛む、猫背などの日常習慣
  • 歯ぎしり、うつぶせ寝などの夜間の習慣
  • 運動や楽器演奏などで歯を食いしばる動作
  • 外傷
  • 悩みごとや緊張感などのストレス要因

特に、上下の歯を接触させる癖は、顎関節症患者さんの8割以上にみられ、症状発現の大きな要因であると考えられています。

通常、口を閉じると歯と歯の間にはわずかに隙間が生じ、歯と歯が接触することは少ないものです。しかし、姿勢などの癖のほか、スポーツなどでも無意識に上下の歯が接触する時間が長くなると、顎関節症を発症するとされています。

放置すると危険?顎関節症を放置するリスク

「少し痛いだけだから大丈夫」と思っていませんか?

顎関節症を放置すると、顎の局部的な炎症にとどまらず、進行して全身に広がる恐れがあります。

顎のずれや噛み合わせが悪化すると、顔面骨格の歪みにつながるほか、頚椎の歪みや仙骨の歪みなど、全身症状に進行するケースもあります。

顎関節症の進行による全身症状には、以下のようなものがあります。

  • 頭、目、鼻、耳の痛み
  • 肩こり、腰痛
  • 手足のしびれ
  • めまい

症状が重くなると、しびれやめまいなどの不調が起こることで気分が落ち込み、日常生活に支障をきたす恐れもあります。

軽度の顎関節症では、しばらく放置して自然に治ったというケースもあります。しかし、それは筋肉の炎症が治まることで痛みが緩和されただけであり、顎の状態が元に戻ったわけではないことを理解する必要があります。

顎関節症は、顎に負担のかかる日常的な動作によって発症することがあります。顎の炎症を生じさせた原因を改善することが重要です。

当院で行う顎関節症の治療について

当院では、顎関節症の症状に対して、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療を行っています。

生活習慣の改善と顎の機能訓練

まずは、生活習慣の見直しと顎の機能訓練を行います。

歯ぎしりや食いしばりの癖がある方には、意識的に上下の歯を離すよう指導します。また、頬杖をつかない、片方の歯だけで噛まない、姿勢を正すなど、日常生活での注意点をお伝えします。

顎の機能訓練では、開口訓練やストレッチなどを行い、顎関節の動きを改善していきます。

マウスピース治療(ナイトガード)

夜間の歯ぎしりや食いしばりによる顎への負担を軽減するため、マウスピース(ナイトガード)を使用します。

マウスピースを装着することで、歯や顎関節にかかる力を分散し、症状の改善を図ります。特にⅢ型やⅣ型の患者さんに効果的です。

噛み合わせの調整

噛み合わせの不具合が原因の場合、詰め物や被せ物の高さを調整したり、歯列矯正を行ったりすることで、顎関節への負担を軽減します。

当院では、噛み合わせの調整、補綴治療、マウスピースなどと組み合わせ、お口全体を診た総合的な治療の一環として位置づけています。

ボツリヌス治療による筋肉の緊張緩和

当院では、歯ぎしり・食いしばり・顎関節症など、口腔機能に悪影響を及ぼす「筋肉の過緊張」に対する治療として、**ボツリヌス治療**を行っています。

ボツリヌス治療は、ボツリヌス菌由来のタンパク質(ボツリヌストキシン)を咬筋や口腔周囲筋に適切に注射し、過剰に緊張した筋肉の働きを一時的に緩和する治療法です。

歯科領域では、見た目の変化を主目的とする美容医療とは異なり、噛む力のコントロールや顎関節への負担軽減といった、**機能面の改善**を重視して行います。

ボツリヌス治療の特長は以下の通りです。

  • 歯ぎしり・食いしばりの緩和
  • 顎関節症症状の改善
  • 非外科的で身体的負担が少ない
  • 治療時間が短い

効果の持続期間は約4〜6か月が目安で、個人差があります。

当院で使用するボツリヌストキシン製剤は、海外(FDA・KFDA)で安全性が確認されている薬剤を適切な管理のもと使用しています。ただし、本治療は国内未承認医薬品を用いた自由診療であるため、治療目的・適応の有無、想定される効果と限界、副作用やリスク、費用・効果持続期間について、事前に十分な説明を行い、ご理解・ご納得いただいたうえで治療を進めています。

治療費:33,000円(税込)

治療回数:1回

治療期間:1日

※健康保険適用外(自費診療)となります。

顎関節症でお悩みの方へ・・・早めの相談が大切です

顎関節症は、放置して手遅れということはありません。

しかし、悪化すると治療期間が延びるほか、治療費用もかかってくるため、症状が気になったタイミングで医療機関に行くことが大切です。

「口を大きく開けたときに、縦三本分の指が入らない」「口を開けたときに雑音がする」「顎が痛む」といった症状がある方は、早めにご相談ください。

当院では、検査と診断を行ったうえで、ボツリヌス治療が適切かどうかを含めてご提案いたします。症状の原因を正確に診断し、患者さん一人ひとりにとって適切な治療選択となるかを慎重に判断することを大切にしています。

詳しい情報や治療についてのご質問は、小林歯科医院のホームページをご覧いただくか、お電話でお問い合わせください。皆様の歯の健康をサポートするために、私たちはいつでもお待ちしております。

著者情報

小林歯科医院 院長 小林 健二

日本顕微鏡歯科学会 認定医