新着情報

コラム

根管治療の失敗事例と再治療で成功する方法

根管治療の失敗とは?その症状と原因を徹底解説

根管治療は歯科治療の中でも特に難しい治療の一つです。虫歯菌が神経まで達した歯を保存するための最後の砦とも言えます。しかし、残念ながらその成功率は決して高くないのが現状です。

日本における根管治療の成功率は50%程度と言われています。つまり、半分の確率で何らかの問題が生じる可能性があるのです。

私は今まで、多くの根管治療の失敗例とその再治療に取り組んできました。マイクロスコープを用いた精密な治療を得意としていますが、それでも難しいケースに直面することがあります。

根管治療が失敗したときに現れる主な症状

根管治療の失敗を示す症状はいくつかあります。これらの症状が現れたら、再治療を検討する必要があるかもしれません。

まず最も多いのが「痛み」です。根管治療後に強い痛みが「長く」続く場合は、治療が適切に行われていない可能性があります。特に噛むときの痛みや、何もしていなくても感じる自発痛は要注意です。

歯茎の腫れも要注意のサインです。治療後1週間程度の軽い腫れは正常ですが、それ以上続く場合や、顔まで腫れてくる場合は再感染の可能性が高いでしょう。

膿が出てくる症状も見逃せません。歯茎から膿が出る、または歯茎に小さな出来物(瘻孔)ができて、そこから膿が排出されることがあります。これは根の先に感染が残っている明らかな証拠です。

「歯が浮いた感じがする」という違和感も、根管治療の感染を示す症状の一つです。これは根の先に炎症が起きていることを示しています。

頭痛や肩こりなど、一見歯とは関係ないような全身症状が現れることもあります。虫歯菌や歯周病菌などによる感染が全身に影響を及ぼすこともあるのです。

根管治療が失敗する主な原因

なぜ根管治療は失敗するのでしょうか?その主な原因を見ていきましょう。

一つ目は、治療の難易度の高さです。根管は非常に細く複雑な形状をしており、肉眼での処置は極めて困難です。特に奥歯は根管が複雑に枝分かれしていることが多く、処置が難しくなります。

¥二つ目は、無菌的処置が守られていないことです。根管治療では、唾液に含まれる細菌が根管内に入らないようにすることが極めて重要です。しかし、日本の歯科医院でラバーダム防湿を行っているのはわずか5%程度と言われています。

ラバーダム防湿とは、治療する歯以外をゴムシートで覆い、唾液が入らないようにする方法です。これが行われないと、せっかく消毒した根管内に再び細菌が侵入してしまいます。

三つ目は、根管内の細菌や感染組織の取り残しです。根管内を完全に清掃・消毒することは容易ではありません。特に複雑な形状の根管では、細菌が取り残されやすくなります。

四つ目は、根管充填や被せ物の不備です。根管内を清掃した後、専用の薬剤で密閉することが重要ですが、隙間があると細菌が侵入する経路になります。また、被せ物と歯の間に隙間があると、そこから細菌が侵入することもあります。

再根管治療とは?成功率と治療の流れ

再根管治療とは、以前に根管治療を行った歯に対して、再度根管治療を行うことです。最初の治療で取り切れなかった感染源を除去し、再び根管内を無菌化することを目的としています。

短文で言えば、失敗した根管治療のやり直しです。

再根管治療の成功率は、初回の根管治療よりも低くなる傾向があります。これは、前回の治療で根管内に充填材が入っていることや、根管の形態が変化していることが多いためです。

統計的には、再根管治療の成功率は40〜80%程度と言われています。この幅が大きいのは、前回の治療の質や、歯の状態によって大きく左右されるためです。

どうですか?この数字を見て不安になりましたか?

しかし、適切な設備と技術を持った専門医による再根管治療なら、成功率は大幅に向上します。マイクロスコープやCTなどの最新機器を用いた精密な治療が鍵となります。

再根管治療の流れ

再根管治療は、通常以下のような流れで行われます。

まず、必要に応じて局所麻酔を行います。非常に痛みが強い場合は、抗生物質や鎮痛剤で急性症状を和らげてから治療を始めることもあります。

次に、前回の治療で詰められた充填材(ガッタパーチャなど)を取り除きます。この作業は非常に繊細で、根管の壁を傷つけないように注意深く行う必要があります。

充填材を取り除いた後、根管内を徹底的に洗浄・消毒します。この際、次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液を用いて、細菌を可能な限り除去します。

洗浄後、根管の形状を整え、再び充填材を詰めます。最近では、バイオセラミックセメントなど、より密閉性の高い材料が使用されることもあります。

最後に、必要に応じて土台を立て、被せ物を装着します。この際、被せ物と歯の間に隙間ができないよう、精密な適合が求められます。

根管治療で失敗しない歯医者選び~5つの重要ポイント

根管治療で後悔しないために、歯科医院選びで必ず確認したい5つの重要ポイントをわかりやすく解説します。再治療を避けたい方におすすめの記事です。


► 記事を読む

再根管治療の成功事例と失敗を防ぐポイント

私の臨床経験から、再根管治療で成功した事例をいくつか紹介します。これらの事例から、成功のポイントを学んでいただければと思います。

47歳男性のケースです。何度か根管治療を繰り返したものの、痛みが消えず、歯肉からの膿も止まらない状態でした。「もう抜歯するしかないのでしょうか」と不安を抱えて来院されました。

レントゲン検査で歯根の先に黒い影(膿の溜まりによる骨の溶解)が確認されました。また、前回の治療で詰められた充填材が根の先まで届いていないことも判明しました。

マイクロスコープを使用して治療を行ったところ、この歯には3本の根管があることが判明しました。発現率1%と珍しいケースで、以前の治療では3本目の根管が見落とされていたことが、治療が成功しなかった原因でした。

3本すべての根管を丁寧に清掃・消毒し、バイオセラミックセメントで密閉したところ、治療後すぐに膿が止まりました。半年後のレントゲン検査では、歯根周囲の黒い影も小さくなり、治癒に向かっていることが確認できました。

このケースから学べる成功のポイントは、マイクロスコープによる精密な診査・診断の重要性です。肉眼では見落としてしまう根管も、拡大視野下では発見できることがあります。

再根管治療を成功させるための3つのポイント

再根管治療を成功させるためには、以下の3つのポイントが極めて重要です。

1つ目は「無菌的処置」です。ラバーダム防湿を確実に行い、唾液からの細菌感染を防ぐことが基本中の基本です。また、使用する器具も完全に滅菌されたものを使用することが重要です。

2つ目は「徹底的な洗浄」です。マイクロスコープ下での見逃し根管や感染物の徹底的な除去、適切な濃度の次亜塩素酸ナトリウムの使用、超音波ファイルの活用などが効果的です。

3つ目は「緊密な封鎖」です。バイオセラミックシーラーなどの高性能な材料を用いて、根管内を三次元的に密閉することが重要です。根尖が破壊されているケースでは、MTAなどの特殊な材料を使用することもあります。

これらのポイントを押さえた治療を行うことで、再根管治療の成功率は大幅に向上します。

再根管治療を受ける際の歯科医院の選び方

再根管治療を受ける際は、どのような歯科医院を選べばよいのでしょうか?成功率を高めるための選び方のポイントを紹介します。

まず最も重要なのは、根管治療に精通した歯科医師が在籍しているかどうかです。日本顕微鏡歯科学会の認定医や、日本歯内療法学会の専門医などの資格を持つ歯科医師なら、高度な根管治療の知識と技術を持っている可能性が高いでしょう。

次に、マイクロスコープやCTなどの設備が整っているかどうかも重要です。根管治療は非常に精密な作業であり、拡大視野下での治療や、三次元的な診断が成功率を高める鍵となります。

ラバーダム防湿を標準的に行っているかどうかも確認しましょう。これは根管治療の基本中の基本であり、これを行わない医院では適切な根管治療が期待できません。

治療前の説明も重要です。現在の歯の状態や、治療計画、予後(治療後の見通し)などを丁寧に説明してくれる医院を選びましょう。また、治療後にその日の治療内容について説明してくれるかどうかも、医院選びの参考になります。

さらに、使用する機材(ファイル)を使い捨てにしているかどうかも確認するとよいでしょう。根管治療用のファイルは、使い回しによって破折リスクが高まるだけでなく、交叉感染のリスクもあります。

これらのポイントを総合的に判断して、信頼できる歯科医院を選ぶことが、再根管治療の成功への第一歩です。

根管治療の失敗を防ぐための予防策と日常のケア

根管治療の失敗を防ぐためには、適切な治療を受けることが最も重要ですが、患者さん自身ができる予防策や日常のケアもあります。

まず、根管治療後は医師の指示に従い、定期的な検診を受けることが大切です。根管治療した歯は神経がないため、問題が生じても痛みを感じにくく、自覚症状がないまま進行することがあります。

また、根管治療後の歯は通常の歯よりも弱くなっているため、過度な力がかからないよう注意が必要です。硬いものを噛むときは気をつけ、歯ぎしりや食いしばりがある方は、ナイトガードなどの装置を使用することも検討しましょう。

日常の口腔ケアも重要です。丁寧な歯磨きとフロスの使用で、被せ物と歯の境目に細菌が溜まるのを防ぎましょう。これにより、二次虫歯のリスクを減らすことができます。

根管治療後の被せ物(クラウン)の管理も重要です。被せ物がグラついたり、隙間ができたりした場合は、すぐに歯科医院を受診しましょう。放置すると、そこから細菌が侵入し、再感染を引き起こす可能性があります。

最後に、全身の健康管理も忘れないでください。糖尿病などの全身疾患は、歯の治癒力にも影響を与えます。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけましょう。

まとめ:根管治療の失敗を乗り越えて健康な歯を取り戻すために

根管治療は歯を保存するための重要な治療ですが、その難しさから失敗するケースも少なくありません。しかし、適切な再治療によって、多くの場合は問題を解決し、歯を保存することが可能です。

根管治療の失敗を示す主な症状としては、痛み、腫れ、膿の排出、違和感などがあります。これらの症状が現れたら、早めに歯科医院を受診しましょう。

再根管治療の成功率を高めるためには、マイクロスコープやCTなどの設備が整った歯科医院で、根管治療に精通した歯科医師による治療を受けることが重要です。特に、ラバーダム防湿を標準的に行っている医院を選ぶことをお勧めします。

また、患者さん自身も定期的な検診や適切な口腔ケアを行うことで、根管治療の失敗リスクを減らすことができます。

「木も見て森も見る」という私の治療方針のように、一本の歯の根管治療に徹底的にこだわりつつ、口腔全体の健康も考慮した総合的なアプローチが、長期的な歯の健康につながると信じています。

根管治療でお悩みの方は、ぜひ専門的な知識と設備を持った歯科医院にご相談ください。適切な治療によって、多くの歯は救うことができるのです。

詳しい根管治療についてのご相談や、最新の治療法についての情報は、当院のホームページでもご確認いただけます。皆様の歯の健康を守るために、私たちはいつでもお手伝いする準備があります。

著者情報

小林歯科医院 院長 小林 健二

日本顕微鏡歯科学会 認定医