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歯周病治療で血圧測定が必要な理由〜安全な治療のための重要ポイント

歯周病治療で血圧測定が必要な理由〜安全な治療のための重要ポイント

歯周病治療で血圧測定が必要な理由〜安全な治療のための重要ポイント

歯周病と全身疾患の深い関係性

「歯周病は歯ぐきだけの病気だと思っていた…」

「歯医者で血圧や血糖値の話をされて戸惑った」

このような声を診療室でよく耳にします。しかし実は、歯周病は単なる口腔内の疾患ではなく、全身の健康状態と深く関わっていることが近年の研究で明らかになっています。

特に注目すべきは、歯周病と糖尿病、高血圧との密接な関連性です。この記事では、歯周病が全身に及ぼす影響と、なぜ歯周病治療の前に血圧測定が必要なのかについて詳しく解説します。

歯周病と糖尿病の「負のサイクル」

歯周病と糖尿病は「双方向に悪影響を与え合う関係」にあります。これは医学的にも証明されている事実です。

糖尿病があると、血糖値が慢性的に高い状態が続くため、体の免疫力が低下します。その結果、歯ぐきの炎症が起こりやすくなり、歯周病が進行しやすくなるのです。また、糖尿病の患者さんは傷の治りが遅く、歯ぐきの炎症がなかなか改善しにくいという特徴もあります。

一方で、歯周病になると体内の炎症が慢性的に続き、インスリン(血糖を下げるホルモン)の働きを妨げることがわかっています。これにより、血糖値がさらに上がりやすくなり、糖尿病の治療が難航してしまうのです。

このように、歯周病と糖尿病はお互いに悪影響を与え合う「負のサイクル」に陥る関係にあります。

驚くべきことに、歯周病の治療を行うことで、血糖コントロールが改善することが報告されています。

歯周病治療で糖尿病が改善する科学的根拠

最近の研究では、歯周病治療によって血糖値が改善することが証明されています。具体的には以下のようなエビデンスが報告されています。

  • 歯周病治療後、HbA1c(過去1〜2ヶ月の平均血糖値)が平均で0.4%改善
  • これは、糖尿病治療薬1種類分と同等の効果とも言われています
  • 東北大学による調査では、歯周病治療を受けた糖尿病患者の人工透析リスクが最大44%減少

さらに、2024年の研究では、クロルヘキシジン(CHX)入りのうがい薬を使用することで、HbA1cの改善が見られたという報告もあります。これは、歯周病菌(特にred complexと呼ばれる悪性の菌)を減らすことで、全身の炎症を抑え、血糖値の安定につながった可能性があると考えられています。

歯周病と高血圧の密接な関係

歯周病は高血圧とも深い関わりがあることがわかっています。歯周病が進行している人は、降圧剤が効きにくい治療抵抗性高血圧のリスクが高いと言われています。

また、歯周病になっている治療抵抗性高血圧の患者に歯周病の治療を行ったところ、血圧の低下が見られたというデータもあります。これは、歯周病菌の刺激によって動脈硬化を誘導する物質が出て、血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が形成され、血液の通り道が狭くなることが原因と考えられています。

歯周病の人はそうでない人の2.8倍も脳梗塞になりやすいというデータもあり、血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療はより重要となります。

高血圧患者さんの歯科治療におけるリスク

歯科治療では、通常局所麻酔薬に「血管収縮薬(アドレナリン)」が含まれており、これが一時的に血圧を上昇させることがあります。

特に、高血圧を治療中の方や、血圧コントロールが不十分な方では、歯科治療中に急激な血圧上昇が起こるリスクがあります。場合によっては、脳出血や心筋梗塞などの重大な合併症につながることもあるため、慎重な対応が必要です。

診療室で血圧を測ると高くなる「白衣高血圧」という現象もあります。そのため、当院では必ず治療前に血圧を測定し、現在の状態を把握したうえで、無理のない治療計画を立てております。

血圧測定が歯科治療の安全性を高める理由

「他の歯医者では血圧を測らなかったのに、なぜここでは測るの?」

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、歯科治療における血圧測定には、患者さんの安全を守るための重要な理由があります。

歯科麻酔と血圧の関係

歯科治療で使用する局所麻酔薬には、通常アドレナリンという血管収縮薬が含まれています。これは麻酔の効果を長持ちさせ、出血を抑える目的で使用されています。

しかし、このアドレナリンは一時的に血圧を上昇させる作用があります。健康な方であれば問題ありませんが、高血圧の患者さんでは、この一時的な血圧上昇が危険な状態を引き起こす可能性があるのです。

具体的には、血圧が180/110mmHg以上の場合、麻酔による更なる血圧上昇で脳出血や心筋梗塞などの重大な合併症リスクが高まります。そのため、治療前の血圧測定は患者さんの安全を守るための重要なステップなのです。

血圧値に基づいた治療判断

血圧測定の結果によって、その日の治療内容を調整することがあります。例えば:

  • 血圧が正常範囲内:予定通りの治療を行います
  • 血圧が軽度上昇(140-159/90-99mmHg):状況に応じて治療を行いますが、ストレスの少ない処置を選択します
  • 血圧が中等度上昇(160-179/100-109mmHg):緊急性のない治療は延期を検討します
  • 血圧が重度上昇(180/110mmHg以上):医科への受診を優先し、歯科治療は延期します

このように、血圧値に基づいて適切な判断を行うことで、安全な歯科治療を提供することができるのです。

糖尿病患者さんの歯科治療における注意点

糖尿病の患者さんが歯科治療を受ける際には、血糖コントロールの状態を確認することも重要です。当院では、糖尿病の患者さんが治療を受ける前にHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値を確認させていただく場合があります。

血糖値が高すぎると治療に制限がかかる理由

血糖値が高すぎると、感染リスクが高くなり、麻酔や外科処置が安全に行えない可能性があります。具体的には、以下のようなリスクがあります:

  • 傷の治癒が遅延する
  • 感染症のリスクが高まる
  • 術後の合併症が増加する
  • 出血が止まりにくくなる

HbA1cの値が8.0%を超えるような場合、特に抜歯などの外科的処置は感染リスクが高まるため、まずは内科医と相談して血糖コントロールを改善してから治療を行うことが推奨されます。

逆に言えば、歯周病の治療をしっかり行うことで、糖尿病のコントロールも改善する可能性があるのです。これは「負のサイクル」を「正のサイクル」に変えるチャンスと言えるでしょう。

安全な歯科治療のための患者さんの心得

歯科治療を安全に受けるために、患者さん自身ができることもあります。特に全身疾患をお持ちの方は、以下のポイントを意識していただくと良いでしょう。

安全な歯科治療のための準備を示すイラスト

服用情報の正確な伝達

現在服用している薬の情報は、必ず歯科医師に伝えましょう。特に以下の薬は重要です:

  • 降圧剤(高血圧の薬)
  • 血糖降下薬(糖尿病の薬)
  • 抗凝固薬・抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)
  • ステロイド薬
  • 骨粗鬆症治療薬(特にビスホスホネート系薬剤)

これらの薬は歯科治療の方法や使用する薬剤に影響を与えることがあります。例えば、抗凝固薬を服用している場合、抜歯などの出血を伴う処置では特別な対応が必要になることがあります。

定期的な健康チェックの重要性

歯科治療の安全性を高めるためには、ご自身の健康状態を把握しておくことも大切です。特に高血圧や糖尿病がある方は、定期的に医科を受診し、適切な管理を受けましょう。

また、家庭での血圧測定も有効です。「白衣高血圧」の方は、家庭で測定した血圧の記録を歯科医院に持参すると、より適切な治療計画を立てることができます。

どうですか?ご自身の健康状態を知ることが、安全な歯科治療につながることがお分かりいただけたでしょうか?

まとめ:歯科と医科はつながっています

歯周病は、単なる「歯ぐきの病気」ではなく、糖尿病や高血圧など全身の健康状態と深く関わっています。そして、歯周病の治療は全身の健康改善にも貢献する可能性があるのです。

歯科医院で血圧を測定するのは、患者さんの安全を守るための重要な対応です。高血圧の方は歯科治療中に血圧がさらに上昇するリスクがあり、糖尿病の方は感染リスクが高まる可能性があります。

口腔の健康は全身の健康の入り口です。歯科治療は単に歯を治すだけでなく、全身の健康を支える重要な医療なのです。

当院では、患者さん一人ひとりの全身状態を把握した上で、安全で効果的な歯周病治療を提供しています。定期的な歯科検診と適切な歯周病治療は、お口の健康だけでなく、全身の健康維持にも貢献します。

歯科医院は”口からはじまる全身の健康づくり”の場所でもあります。お口の健康を守ることが、あなたの健康寿命を延ばす第一歩です。

今日から、お口のケアと全身の健康管理を一緒に始めてみませんか?

監修者プロフィール

氏名 小林 健二(Kenji Kobayashi)

小林歯科医院 院長/日本顕微鏡歯科学会 認定医
松本歯科大学卒業後、大学病院・鴨居歯科医院などで臨床研修を経たのち、望月デンタルクリニックにて保険診療から精密治療、自費診療に幅広く携わる。令和4年(2022年)5月に小林歯科医院を継承・リニューアルし院長就任。地域医療に精通し、開業は1982年で数十年にわたり地元に根ざした診療を提供。

治療理念

「一口腔単位での治療」を基本に掲げ、口腔内全体の機能と見た目のバランスを重視する。“木も見て森も見る”アプローチで、単に症状部位ではなく全体の健康を診る治療を実践。

特徴・技術

マイクロスコープを用いた高度な精密治療に加え、再生療法・審美・予防にも注力。また、世界初の重度歯周病治療器「ブルーラジカルP-01」を導入する先進性も備える。

メディア出演

雑誌「COMPANY TANK」「美人百花」、医師向けメディア「Doctors Film 医師たちの決断」に登場するなど、情報発信にも積極的。